「もやしと豚肉、炒めるか。」
冷蔵庫にあるものを見て、
そんなふうに決めた、今日のお昼。
凝った料理を作る気分でもなくて、
かといってインスタントで済ませるのも味気ない。
そんなとき、なぜか「もやしと豚肉」っていう組み合わせが、
やけにしっくりきた。
油を熱して、豚肉から投入。
ジュウゥッという音とともに、少しずつ香りが立ってくる。
次にもやしを加えて、さっと炒める。
味付けはシンプルに、塩コショウと、ちょっとだけ醤油。
たったそれだけ。
でもこの“たったそれだけ”が、
すごくうまくいく日ってあるんだなと思った。
皿に盛って、熱々のごはんと一緒にテーブルへ。
テレビもつけず、スマホもいじらず。
目の前のごはんに、ただ向き合う。
ひとりで食べるお昼。
誰とも話さないけど、なんだか満たされていく感じがした。
もやしって、安い。
豚肉も、特売の日に買ったやつ。
だけど、このふたつを一緒に炒めるだけで、
あったかいごはんのおかずになる。
たぶん、何百円もかかってない。
それでも「ちゃんと食べたな」っていう満足感があった。
ひとり暮らしって、
こういう小さな“自分への調理”が積み重なっていく。
誰かのためでもない。
SNSに載せるわけでもない。
ただ、自分のために作って、自分で食べる。
それって、たぶん「自分を大事にしてる時間」なんだと思う。
洗い物をしながら、
「またこの組み合わせ、やろう」と思った。
しょうが入れてみてもいいかも。
味噌だれにしてもいいし、キムチを少し混ぜるのもアリ。
こうして少しずつ、自分だけのレシピが増えていくのも、
なんだか楽しい。
午後の部屋には、まだ炒め物の香りが残っていて、
それも悪くないと思った。