1人で半額惣菜を買っています。ささやかな戦いと、ちいさな誇り。

投稿者: | 2025年4月17日

夕方6時半。
会社帰りに立ち寄った駅前のスーパー。
その日の空気は、どこか戦の始まりを告げるような緊張感に満ちていた。

目的はただひとつ。
「半額惣菜コーナー」。

一人暮らしを始めてから、何度このコーナーに足を運んだだろう。
冷蔵庫は空っぽ。
自炊する気力もない日だってある。
でも、お腹は空く。
節約だってしたい。

だから私は、1人で半額惣菜を買っている。

最初は少し恥ずかしかった。

誰かに見られている気がした。
「こんな時間に、惣菜なんて…」って
思われるんじゃないかって。

でも、いつの間にか慣れていた。
いや、むしろ“楽しんでいる”自分がいた。

冷しゃぶ、唐揚げ、春巻き、サラダ、煮物――
どれも定価で買えば300円、400円するものが
見事に「半額」の赤いシールを貼られて
魅力的に輝いている。

まるで小さな宝探し。
いいものに出会えたら、ラッキー。
その日一日の疲れが、少しだけ報われる気がする。

それに、1人だからできることもある。

他人の好みに合わせる必要がない。
好きな惣菜を、好きなだけ。
冷ややっことか、かぼちゃの煮物とか。
ちょっと渋めのチョイスだって遠慮はいらない。

夕飯のメニューは、自分で決める。
一人暮らしの小さな自由。

最近では、他にも「半額仲間」と思われる人たちを
ちらほら見かけるようになった。

仕事帰りのサラリーマン、
買い物袋を片手にした高齢の女性、
同じく一人暮らしっぽい大学生。

誰も言葉を交わさないけど、
それぞれの生活の中で「選びとった惣菜」を手に
レジへと向かっていく。

帰宅後、買ってきた惣菜を
お気に入りの小皿に移すだけで、
なんだかちょっとだけ丁寧な食卓になる。

テレビの音を小さめにして、
湯呑みにお茶を入れ、
ひとりで「いただきます」と手を合わせる。

それだけで、ほっとする。

SNSには、キラキラしたごはんや
外食の写真があふれているけど、
私にとってはこの「半額惣菜ごはん」が
等身大の“ちょっといい夕食”だ。

見栄も張らず、頑張りすぎず、
でもどこかちょっと愛おしい日常。

たまに、ふと寂しくなる日もある。
誰かと並んで食べたいな、と思うことも。
だけど、いまはこの生活がちょうどいい。
自分で選んだ惣菜、自分で用意したごはん。

誰かのためじゃなく、
「今日も頑張った自分のため」に食べるごはんは、
それなりに意味があると思ってる。

また明日も、スーパーに寄るかもしれない。

冷しゃぶが残ってたらラッキー。
唐揚げはライバル多めなので早めが狙い目。
半額ステッカーが貼られるその瞬間のワクワクは、
きっとこれからも味わい続けるんだろうな。

1人で半額惣菜を買っている。
それが、いまの私のリアルで、心地いい日常。

★★★★☆ (4 / 5)

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