昨晩、一人でホルモンを買ってきた。
スーパーの惣菜コーナーじゃない。
近所の精肉店で、パック詰めじゃない“量り売り”のやつ。
ニラとネギと一緒に、甘辛く味付けされたぷりぷりのホルモン。
仕事帰りにふらっと寄って、
「これ、100グラムだけください」って言った。
なんでもないようでいて、少しだけ贅沢な買い物だった。
家に帰って、すぐにキッチンへ。
ごま油をひいて、弱火でじっくり炒める。
香りが立って、ネギがしんなりしてきたところで、
冷蔵庫から冷えた缶チューハイを取り出す。
シュッという音とともに、一日のスイッチがオフになった。
テレビもつけず、音楽もかけなかった。
ただホルモンと、チューハイと、沈黙。
それがちょうどよかった。
ホルモンって、不思議な食べ物だと思う。
焼肉屋では人気だけど、家ではあまり食べない。
手間がかかりそうで、脂っこいイメージもあって、
どこか“外食の味”みたいな位置にいる。
でも、一人で食べると、その“ハレ”感が逆に心地いい。
今日はちょっと特別なんだぞって、自分にだけわかる感じ。
口の中で噛むたびに、脂と甘辛いタレのコクが広がる。
それをチューハイで流し込む。
炭酸が口の中をすっきりさせてくれて、
また次の一口が美味しく感じる。
誰かと話す必要も、気を遣う必要もない。
ただ、食べて、飲んで、ちょっとぼーっとして。
思えば、こういう夜が増えた。
一人で食べて、一人で飲んで、一人で寝る。
寂しいかって?
正直、ちょっとはそう思う日もある。
でも昨日は違った。
なんだか満たされていた。
「誰かと食べる方が、楽しいよ」
そう言われることもある。
それは間違ってないと思う。
でも、誰かと食べる前に、
自分ひとりでちゃんと味わえる人でいたい。
そういう夜も、あっていいと思う。
ホルモンを食べ終えて、
最後に少し残ったタレをごはんにかけた。
それをひと口食べて、思わずうなずいた。
「これが一番うまいかもしれない」って。
静かな夜だった。
でも、すごくいい夜だった。