平日の放課後。
塾が始まるまでに少しだけ時間があった。
お腹は空いてるけど、誰かと一緒に行く時間もない。
なんとなく駅の近くを歩いていたら、小さなラーメン屋が目に入った。
「入ってみようかな」
でも、ちょっと迷った。
一人でラーメン屋に入るのって、こんなに勇気いるんだ。
外から店内をのぞいてみると、
サラリーマンが数人、黙々とラーメンをすすっていた。
「高校生が一人で来てるなんて変かな…」
そんな気持ちが頭をよぎる。
でも、もうお腹が限界だった。
自分の中で何かが「いけ」と言ってる気がして、
思い切って、引き戸をガラッと開けた。
カウンター席。少し緊張。だけど、店員さんは普通だった。
「いらっしゃいませー」
「あ、一人です」
そう答えると、すぐにカウンターに案内された。
誰も私のことなんか見てない。
みんな、自分のラーメンに集中してる。
…たぶん、思ってたより“気にされない”もんなんだな。
醤油ラーメン、注文してみた。
ラーメンの湯気が、少し目を潤ませる。
ひと口すすって、
「…うまい」と心の中で思った。
誰かと食べるのも好きだけど、
こうやって、一人でゆっくり食べるラーメンって、
なんか自分と向き合ってる感じがして悪くない。
気づけば、食べ終わる頃には緊張もほどけてた。
食べてるうちに、
「なんであんなに緊張してたんだろ」って不思議になる。
一人で来たこと、
誰にもバレない。
誰にも怒られない。
でも、ちょっとだけ“大人になった気分”。
また行こう、ひとりラーメン。
きっと今日が、**“はじめてのひとりラーメン記念日”**になるんだろうな。
いつか思い出したとき、
「あのとき、ちょっとだけ勇気出してよかった」って思える気がする。