あの日、突然いなくなった。
玄関前の鎖が、ちぎれていた。
**柴犬の「コテツ」**がいない。
吠え声も聞こえない。足音もない。
焦って探した。
ご近所、交番、SNS、保健所…
ポスターまで貼った。
「茶色の柴犬がいなくなりました」
でも、見つからなかった。
そして――7日目の朝。
玄関を開けたら、
そこにいた。
泥だらけで、
目だけはしっかりこちらを見てた。
水を飲み干したあと、
何事もなかったように横になって寝た。
どこへ行ってたのか。
何を見たのか。
どうやって帰ってきたのか。
言葉はないけど、
その背中が、まるで“旅を終えた男”のようだった。
ちょっとだけ、カッコよかった。
そして、泣けた。